|日本語English中文
2019.8.1
【出版情報】都市美 創刊第1号
責任編集 : 山本 理顕
発行:名古屋造形大学

創刊の辞

芸術活動は私という存在の内側を探求する活動ではない。
芸術家の活動は他者の存在を必要とする。
芸術活動は他者の共感を求める活動である。あるものを見て美しいと判断する。自分一人の内側でそう判断するだけではなくて、そこには、その判断を他者に対して共有してほしいという、懇願の気持ちが潜んでいる。
あなたと私は、今、同じ空間にいてそして同じものを見て同じようにそれを美しいと感じている。そのように感動している気持ちを「共感」と言う。イマニエル・カントが発見した感情である。
他者とは誰か。
私のすぐ隣にいる人であり、私と共に住む地域社会の人々である。芸術活動はそうした他者の共感を必要とする。
そうした人々が住む日常の生活空間を豊かにする活動が芸術活動である。私たち芸術家は日常生活の空間を美しい空間として提案し、それを具体的に表現することができる。
今、都市は経済活動のための空間である。経済活動のためにこそあると考えられている。都市は投資の場所であり、それを数倍、数十倍にもして回収する場所である。都市空間は投資家のためにある。
大した資金力もないせこい投資家のために日本の都市空間は切り刻まれ、彼らはそれぞれにせこい利益を稼いでいる。
そこに決定的に欠落しているのは美学である。美しい都市空間をつくるという意識である。彼らはそんなことなどまるで気にしない。気にもかけない。

そんな切り刻まれた都市空間が芸術家たちの活躍する空間なのである。
芸術家は美しい都市空間を提案し、その共感を訴えて懇願する。美しい都市は、隣人と共に住むための都市である。グローバル経済という私的利益のためではなく、そこに住んでいる人々のための美しい都市である。

『都市美』を刊行します。美しい都市空間を提案し、そしてその実現を目指す人たちに寄り添いたいと思います。

2019年8月1日
名古屋造形大学学長 山本理顕

詳しくはこちらをご覧ください。